●今年もあの日がやってきました。
江戸時代、その場所の埋め立てが始まったのだそうです。
リアス式海岸沿いに、
川から流れてきた堆積物の上に土を盛り、
海の一部だったその場所を
人々は陸に変えて行きました。
やがてそこに人が住むようになり、商店が出来、駅ができて、
街になりました。
デビューしてから数年後、
両親とお墓参りに行った時、
電車で海岸線沿いを走ったことがありました。
背後に高い山があり、
その山の裾から平坦に広がる街が見えました。
それがそのようにして作られた場所だったのかあ。
震災後、何度もお訪れた東北の街。
何年経っても、空はとても高く、地面はいつまでも低いままでした。
その土地こそ、昔、海の一部だった場所。
津波は、自分を取り返しにやってきたんだなと思いました。
自然は壊されたら、いつか、必ず、自分を取り返しにやってくる。
私たちはそのことになかなか気がつけない。
ふと辺野古の海が頭の中を過ぎりました。
「EPOさん?被災した東北は、時間軸では動いていません。
住むところや、仕事や様々なものが、ひとつづつ増える時、
それが私たちのアニバーサリーと感じています。」
地元で聴いた言葉でした。
「夢に出てきたんだよね。お父さんが。元気でやってるから心配すんなて」
「時々、気配がすんの。台所でさあ」
「時々、気配がすんの。台所でさあ。」
「あの場所で青い光を見たんだあ。」
愛する人や家族を失った人たちは、
時々こんな言葉を口にします。
私たちは目に見えないものを大切に思うことを、
本来は、信じているのだと思います。